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2008年12月25日 (木)

死刑執行10年、でも許せない…終わりのない遺族

死刑関連ニュース
12月16日3時5分配信 読売新聞

9歳の「やっちゃん」はいつも星空を見上げていた。当時のまま残してある勉強机には、大好きだった天体の本が並んでいる。

広島県福山市の森田泰元(たいげん)さん(64)、泰子さん(61)の長男・泰州(やすくに)ちゃんが誘拐され、命を奪われてから、もうすぐ25年になる。そして、犯人の津田暎(あきら)死刑囚(執行当時59歳)の刑が執行されて、10年が過ぎた。

泰元さんは8期32年務めてきた福山市議を今年4月に引退した。現在、NPO「日本宇宙少年団」の分団長として、天体観測を通じ、子供たちに宇宙に親しんでもらう活動に取り組む。「生きていれば、息子は33歳。少年団の指導役として活躍してくれただろう」。そんな思いに駆られる。

遺体が発見された福山市内の雑木林には、泰元さんの友人の手で建てられた小さな地蔵がある。月命日がくると、泰元さんと泰子さんは必ずこことお墓を訪れ、花を手向ける。

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1984年2月13日夕。津田死刑囚は「バレンタインのチョコを買いに行こう」と泰州ちゃんを誘った。わずか2時間後、「家に帰りたい」と泣く泰州ちゃんの首を絞めて殺害。雪の残る雑木林に遺体を投げ捨て、その後8回にわたり脅迫電話をかけ、身代金1000万円を要求した。

津田死刑囚は、泰元さんの後援会のメンバーで、泰州ちゃんの入っていた少年ソフトボールチームのコーチも務めていた。賭け事で作った借金に追われ、金をとりたいという、ただそれだけの動機だった。「人を疑うことを知らない子供をなぜ……。こんなことをされるくらいなら、お金は貸したのに」。知り合いの卑劣な犯行を、泰元さんは絶対に許せなかった。

泰元さん夫妻はほとんど法廷に足を運んでいない。「(津田死刑囚と)一緒の空気を吸うことすら嫌でした」と泰子さんは言う。

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 死刑判決は、最高裁で91年6月に確定した。被害者が子供1人の別の誘拐殺人事件で無期懲役の判決が出ていたこともあり、弁護士から再審請求を勧められたが、津田死刑囚は「死ぬ覚悟はできている」と断ったという。

「遺族は『あいつはまだ生きとるんか』と、怒っとるじゃろう。執行にならんと、許してもらえんだろうな」。広島拘置所で、津田死刑囚が何度も口にしていた姿を、元拘置所関係者は記憶している。

聖書を読み、「『あいつを殺すのは惜しい』と言われるような人間になってから執行されなければ、泰州ちゃんの命とのバランスが取れない。心の豊かな人間になりたい」とも語った。泰州ちゃんの命日には、冥福を祈っていた。

98年11月19日、死刑が執行された。刑場で「いろいろとお世話になりました」と刑務官に礼を言った。遺族に謝罪の手紙を書くことは最後までなかった。

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泰元さんは、死刑判決を「当然の司法判断だ」と思った。息子を失った悲しみに耐えることに精いっぱいで、それ以外、何も感じなかった。司法の手続き上、一つの区切りにすぎないという気持ちがした。

執行をだれから知らされたかも、今となっては覚えていない。遅かれ早かれ、その日は来ると思っていた。やはり、「当然の結果」と受け止めただけだった。

毎月、毎月、月命日は巡ってくる。年月を重ね、悲しみが少しずつかさぶたのように固まっていく気もするが、津田死刑囚を許せないという思いが風化することはない。

「犯人は死刑になったら、それで終わりかもしれない。でも、私たちは死ぬまで事件を引きずって生きていく。無期懲役にされたようなものです」。泰元さんが拳を握りしめた。

 連載「死刑」第2部かえらぬ命(5)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081216-00000004-yom-soci

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