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2008年8月11日 (月)

八つ当たりで無差別殺人犯 頻発する“歪んだ自己愛”

死刑関連ニュース
8月9日16時3分配信 産経新聞

通行人や買い物客が無差別に襲われる事件が相次いでいる。容疑者たちは「鬱憤(うっぷん)をはらしたかった」「誰でもよかった」と短絡的な動機を口にするが、このうち、最近は「(親や上司を)困らせるためにやった」と供述するケースが目立っている。対人関係の八つ当たりから無差別殺傷に飛躍する理不尽な凶行。専門家は自分を過大視する「歪んだ自己愛」が背景にあるとみているが…。
 
 
捜査員も首をかしげる「自己中心的な動機」
 
秋葉原無差別殺傷事件から1カ月余りたった7月15日深夜。スーパー地下1階の食料品売り場は客もまばらだった。

スーパーでのアルバイトを終えて買い物をしていた女性(53)に突然、男が近づいた。その瞬間、女性の胸に何かが当たった。

男が手に持った刃渡り約10センチのバタフライナイフには鮮血がべっとりとついていた。女性は男に胸など数カ所を刺され、命に別状はなかったが重傷を負った。男性とは全く面識がなかった。

男はナイフを持ったまま近くの交番に出頭し、逮捕された。男は調べで、22歳のシロアリ駆除会社社員と判明。動機についてこう供述した。
「普段から社長に仕事で文句を言われ、(犯行を起こして)恥をかかせてやろうと思った」
警視庁のベテラン捜査員は首をかしげた。
「勤務先の社長への不満? それがなぜ、関係のない女性に向けられるのか…? 自己中心的というのか、全く理解に苦しむ」

ところが、この事件から1週間のうちに、身近な相手を「困らせよう」との動機で、無関係の人に危害を加えるケースが続いたのである。
翌日の16日には愛知県岡崎市で14歳の少年が東京行きの高速バスをジャック。少年は愛知県警捜査員の説得に応じて投降し、短時間で解決したが、動機について「(交際しようとしていた)女子生徒に10万円を渡そうと友人に借金を申し込んだら、両親にしかられた。両親に対する嫌がらせでやった」と供述した。

22日には東京・八王子の駅ビル書店で、アルバイト店員の女子大生(22)が包丁で刺されて死亡し、客の女性(21)も重傷を負った。

逮捕された会社員の男(33)の動機は「職場の人間関係に不満が募り、悩みを両親に相談したが聞いてもらえず、困らせようと思った」というものだった。
 
 
背景に“自殺願望”? 原点は池田小事件か
 
「人を困らせてやろう」という動機から無差別殺傷事件を起こした事件では、大阪教育大付属池田小の事件が思い起こされる。

何ら罪のない児童8人を殺害するなど計23人を殺傷した事件は「我が国の犯罪史上例をみない凶悪重大事件」(大阪地裁判決)とされた。

死刑を宣告した大阪地裁判決は、宅間守元死刑囚(執行)の犯行動機についてこう指摘している。

《3番目の妻に対する恨みが社会全体に対する恨みに転化し、後悔の連続であった自分の苦しい思いを多くの人にわからせてやろう…(中略)…どうせやるなら小学校を襲った方が大きな事件となって社会の反響が大きい。それがひいては父親や3番目の妻に対する復讐にもなると考えて犯行を決意した》

最近の無差別殺傷事件の動機と共通するところが多くみられる。
謝罪を最後まで拒否し、責任転嫁に終始し遺族感情を逆撫でする言動を繰り返した宅間元死刑囚。「死刑でええ。死ぬことはびびってない」と公判で明言し、弁護団の控訴を自らが取り下げたため地裁判決が確定。1年後には死刑が執行される異例のスピード執行だった。

「無差別殺傷事件を起こす容疑者には、自殺願望があるものの自分では実行できないため、死刑を望んで犯行をする人間が多い。心の片隅に池田小事件の記憶が残っていることも考えられ、宅間元死刑囚が“悪の英雄”になっていなければいいのだが…」

警察OBは相次ぐ無差別殺傷事件について、元死刑囚が与えた影響を危惧するのだ。
 
 
自己を過大視…若者に多い傾向
 
嫌がらせや、困らせるために、その相手ではなく、見ず知らずの他人を襲う凶行。“八つ当たり”にしても理解不能だが、その心理構造はどういったものなのだろうか。

「何かトラブルを起こして相手を困らせようとするのは『甘え型・依存型犯罪』。子供が叱られて『グレてやる』というのと一緒だ」

新潟青陵大大学院教授(犯罪心理)の碓井真史氏は、この手の犯行は幼稚な精神構造が背景にあると説明する。

碓井氏によると、基本的には人間の憎しみの感情の裏側には、甘えの感情があるという。

全く無関係の人間であるならば、その人の意見に左右されることはないものの、親や社長などもともと人間関係ができあがっている場合には、「愛されたい」「認められたい」という気持ちが働く。さらに本人にとってその存在が大きければ、関係はリラックスからストレスへと変化していくというのだ。

「『こんなに一生懸命にやっているのに、なんで理解してくれないんだ』との思いがあるはず。最悪の場合、事件を起こすなど自分の幸せを犠牲にしてでも相手を困らせようという論理に飛躍する」と碓井教授は分析する。

さらに、こうした精神構造は、最近の若者に多くみられるという。
「現代の若者には、打たれ弱く必要以上に自分が惨めだと考える傾向にある。だが、その裏で、自分を過大視しており、『なぜ認めないんだ』『自分はこんなもんではない』との思いも強い。こうした『歪んだ自己愛』を持った者が増えていることが影響しているのではないか」

最近の無差別殺傷事件の容疑者には、同種の事件を起こした前歴がないことが共通する。「フツーの人」がある日突然、「凶悪犯」へと変貌するのだ。

その分、警察当局も“予備軍”を把握できていないのが現状だ。
直接効果のある対策は見いだされていないが、こうした理不尽な犯行が繰り返されるようでは、被害者の無念は浮かばれない。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080809-00000927-san-soci

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