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2008年7月14日 (月)

死刑執行13人 鳩山法相の死生観

特集ワイド:死刑執行13人 鳩山法相の死生観

■遺族が望んでいるなら断ち切れない

■日本人はウエット

何かとお騒がせな鳩山邦夫法務大臣(59)である。安倍改造内閣で昨年8月に就任、同9月の福田内閣発足で再任されて以来、13人の死刑を執行し、朝日新聞の一面コラム「素粒子」に「死に神」と書かれて、怒った。「執行を自動的に」「友人の友人はアルカイダ」発言など、話題が絶えない。鳩山大臣、いかなる人物なのか。

文京区本駒込の自宅を訪ねると、アロハシャツの大臣は、台所の椅子にどかっと腰を下ろした。

「批判、中傷は慣れとる」。だから「死に神」と書かれたときの最初の反応は「ふーん、よく言うわ」だった。だが「待てよ、これはいかんわ、絶対いかん」と思い直したという。

「だって正義のために死んでもらっているわけでしょ。他人を無残に殺して生き延びていてはいけない、というのが日本の法律であり、世論だ」。熱弁は続く。「遺族は極刑を望んでいる。大部分は1日も早い死刑執行を願っている。一生忘れることのできない傷であっても、正義の実現により、墓前に報告できる。うちの家族を殺したから報いを受けたんだよ、と。そういう気持ちになろうとしているときに、死に神が連れて行ったと言われたら、どう思うか」

大臣は死刑にどうかかわっているのか。

法務省の職員が再審や恩赦の可能性、心神喪失などの要素を検討し、候補を挙げる。「説明を聞いた後、自分でも1件あたり2時間くらい資料を読む。資料は持ち出せないから大臣室にこもって。それで、皆さんが提案してきたなかでこういうのをやりましょうか、と決まる」。先月17日に執行された連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤死刑囚の資料も見た。「私も精査して、間違いないね、と決めた」。秋葉原殺傷事件直後の「みせしめ執行」説もあるが、「事件前に内定していた」と明確に否定した。

だが、大臣が「日本の生命観は自然と共生であり、日本人はウエット」という持論を話し出したあたりから、分からなくなってきた。「死刑廃止論はドライでかさかさした人たちの考え。人の命を奪ったんですよ。何人奪っても死刑がない、そんなドライな世の中に私は生きたくない」

大臣は、日本人は木や石などすべてのものに神をみるアニミズム(汎神論者)と考えている。「すべての命を大事にする文明だ。すべてと共生するアニミズムこそ、洞爺湖サミット最大の課題である地球環境を救う唯一の道だ」

……分からない。すべての命に死刑囚は含まれないのか。後で元秘書に解釈してもらう。「大臣の立ち位置は死刑囚でなく、遺族。遺族が死刑を望んでいるならその望みを断ち切ることはできない、という意味でウエットなんです」

 どうしても聞きたかったことがある。裁判員になって死刑判決にかかわるのは嫌だという理由で、裁判員になることを拒否できるのか。

答えは意外にもイエスだった。「それはなんとか認める方向に持っていこうとしている。どうしても苦痛が大きいのであれば配慮されるようになると思う」

大臣自身は死刑執行前に心の整理をつけるため、東京・谷中の鳩山家の墓や、福岡にある母の父であるブリヂストン創業者石橋正二郎氏の墓にお参りするという。「極めて凶悪、社会を震かんさせた事件、あるいは遺族が極刑を望んでいる、手口が残忍など、私なりに記録を精査、再確認して、やらなきゃならないと思ってからお参りをする。おじいさん、お父さん、やらせていただきますよ、と」

鳩山家の宗教は神道だ。だが、大臣は真言密教の鹿児島最福寺の総代でもある。居間には池口恵観大阿闍梨から贈られた不動明王の像が鎮座していた。「不動明王は地獄に落ちた人を救うそうです。執行した後は不動明王にお参りしてます」という。大臣は、ひょっとして地獄に落ちるかも、と怖いのだろうか。

「失礼だな、私自身は地獄に落ちるとは全然思っていない。死刑囚は天国に行かず地獄に落ちるだろうから(死刑囚を)導いてくれ、ということだ」とむっとした。

その不動明王の隣の祭壇に、犬の写真と白い袋に包まれた骨つぼがあった。(溺愛できあい)していたポメラニアンのジャム(雄)が昨年3月、16歳で死んだのだ。

「家に帰ってもすることがない。午後11時ごろ帰宅して、ジャムとじゃれて一緒に寝るという生活がずっと続いてきたから。ジャムのいない家になぜ帰ってきたのだろうと思うことがある、1年4カ月たった今でも」。

選挙区に向かう飛行機の中で、「私のお墓の前で泣かないでください」で始まる「千の風になって」を初めて聞いた大臣。「これはジャムの歌だ、光も風もジャムなんだ」と思ったとたん、涙が止まらなくなったという。

◇身近な人の鳩山評

■「裏表の感覚ない王様」


身近な人に鳩山評を聞いてみた。正直、子どもっぽい、人情家、強情、努力家、野心なし--。写真のように覚える直観像記憶があるのでは、との推測まで飛び出した。

「本質は芸人。受けるか、受けないかがすべて」。あるメディア関係者は批判する。「注目させて、ほめられたら万歳。もっと受けようとして放言する。死刑囚の人権など後からつけた理屈だ」

一方、元秘書で、ジャーナリストの上杉隆氏は「普段の発言が報道されただけ。大臣はプラスマイナスなしにそのまま。深読みすべきではない」。

物心ついたときは、祖父は総理大臣、父は大蔵官僚。音羽の邸宅には常に政治家、記者、秘書がうろうろしていた。「普通の人にとって公式な世界が、鳩山氏にとってはプライベート。だからオンオフ、裏表の感覚が育たなかった」というのが上杉氏の分析だ。他人が家で生活していても、どんな相手に出会っても、緊張することも怖がることもない。つまり王様だ。取材の際も、目の前でランニングシャツとパンツになって、スーツに着替えていた。

こうだと思ったら、政治的損得は考えず、突き進むタイプらしい。財界人が集まった後援会で「日本はマイナス成長すべきだ」と発言したこともあるという。

趣味は、チョウの飼育、畑仕事、料理。朝6時ごろから包丁を握り、庭で育てた無農薬野菜で秘書らの朝食をつくる。食わせて育てた秘書出身の国会議員は現在、衆参合わせて7人もいる。


はとやま・くにお 1948年生まれ。東大法学部卒。76年、28歳で初当選。当選10回。文部、労働各大臣を歴任。祖父は鳩山一郎元首相。父は威一郎元外相。兄は鳩山由紀夫・民主党幹事長。


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